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不透明な男

第14章 終幕



智「っはぁ、は…」

A「苦しいか?」

B「相当熱を持ってるな…」

智「ど、どうしてアイツがここに」

B「つけられてたらしい」

智「い、いつから見て、た…」

A「そんな事より身体を拭いた方がいい」


ガタガタと震える身体を抱き締められ、流れる汗にタオルを当てる。


B「こんなに熱いのに、どうして震えるんだ…。寒いのか?」

智「ううん…、あ、熱くて、苦し…っ」

A「治まるまで辛いだろうな…」


未だ身体は火照り、血液が駆け回る。
意思とは裏腹に疼く身体を抑えられなくて、苦しいんだ。


智「っ、しゃ、シャワーしてくる」

A「タオルで我慢しろ。今熱い湯なんて浴びたら倒れるぞ」

智「大丈夫だよ…」

B「駄目だって、言う事聞けよ」

智「気持ち悪いんだよ…」


気持ち悪かったんだ。
ベタベタする汗が気持ち悪いんじゃない、あの感触が身体に貼り付いて気持ち悪いんだ。


智「アイツらに触られた所が、気持ち悪くて吐きそうなんだよ…」


Aの腕にしがみつき、熱で潤んだ瞳で訴える。


A「分かった…。洗ってやる」

智「いい、自分で洗うよ。こんな汚いの、触らせたく無いから…」

B「成瀬…」


ゼェゼェと肩で息をする俺の後ろ姿を心配そうに見守る。
何かあったらすぐに呼べと念を押されて、俺は一人でバスルームに入る。


智「ふぅ…」


ガクガクと震える膝を押さえてバスタブに腰掛けた。
キュッと捻ったシャワーが温まるのを待つ。


智「っ、はぁ、はぁ…」


シャワーは温まっているのに、息があがってなかなか立ち上がれない。
仕方なく腰掛けたまま、身体に泡を纏う。


智「ん、ふぅ…っ、ふ…っ」


熱い身体を冷やしもせず、更に熱いシャワーを浴びたからだろうか。
熱が籠り、何もしていないのに血液が身体の中心に集まる。


智「うぅ…」


抑えられない。
ぎゅっと身体を抱き締めても全身がドクドクと脈を打つ。


ガタガタと震えた身体は、そのままバスタブから滑り落ちた。





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