
不透明な男
第12章 惑乱
俺の身体からすっかり熱が冷めてしまった事に気付いたのか、女は俺の上に跨がった。
俺の萎えかけているモノに腰を押し付け、自分の局部を擦り合わせてくる。
智「…っ、駄目でしょ。まだ、話の途中…」
「そんなに、興味あるの…?」
智「ありますよ…、だって、社長という人が、どんな人か、僕はよく知らな…っ」
「ふふ…、このままでも、話は出来るわよ…」
女はどんどん濡れてくるその場所を、ゆっくり、ゆっくりと擦る様に腰を動かす。
「…っん、それで、社長は待ってるのかと思ったら、自分も出掛けちゃって」
智「出掛けた…?」
「そ、外で、話をしたんでしょう。凄く、意気込んでいたから」
智「意気込んでたから外でって、どうして…?」
なんだその理由?
「最後の交渉で頷かなかったらどうするの、諦めるの?って聞いたら」
智「はい…」
なんだろう、嫌な予感がする。
「その場合は最終手段がある。あの子は必ず自分のモノになるって、やけに自信満々だったわ」
智「最終、手段…?」
「貴方も、聞いた事が無い訳じゃないでしょ?あの、社長の黒い噂…」
黒い噂。
日に日に増えていく噂話。
やれどこぞの暴力団と通じてるとか、ヤクがどうだとか、密売人がしくじったから消してやったとか、そんな噂か?
「そういう事、普通に出来る人だもの。プライドを傷つけられて何するか…」
心臓が止まったかと思った。
ドクンと、ひとつ大きく鳴った心臓が、次に動くかどうか分からない位だった。
智「な、何を、したんですか…」
「そこまでは聞いてないわ…。だって、聞かなくても分かるもの。あの蝶の車はあの日以来見てないの。それにあの両親だってもう居ないわ」
あら、萎えちゃったじゃないの。こんな話をしたからねと、また俺を口に含んだ。
智「居ないなんて、どうして分かるんですか…」
「前はうちもライバル社だったのよ。社長の弱味を握ってやろうと調べたの。そしたら、何処をどう探しても両親は出てこないし、あの子の家だって社長のモノになってたのよ?」
智「それはどういう…」
「防犯カメラに写り込んでたのからすると、埠頭に行ったのが最後ね。…それからは、あの車が戻ってくるのを見ていない。勿論あの両親もね」
まさか、俺が這い出たあの海に、俺の両親も眠っていると言うのか。
