テキストサイズ

不透明な男

第11章 背徳


早く言え、正直になれ、と俺を攻め立てる。

コイツも限界が近付いてきたようで、焦りが見えていた。


智「んぅ、は、話すって言ったら、外して、くれるの…?」

A「ああ、素直になったら、外してやるよ」


取り敢えずもう限界だ。
こんなん続けられちゃ、それこそ頭がおかしくなっちまう。


智「んぅ…、お、おれ、もう、だめ…」

A「話す気になったか?」

智「あ、あっ、は、やく…っ、はずし…」


潤んだ瞳をAにぶつける。


A「言うか…?」

智「お願いだよ、もう…っ、く」


唇を震わせ、涙を頬に伝わせる。


A「…それはそうと、あれ」

智「んぅ、知ってる、よ…」

A「気付いてたのか?」


俺たち二人以外の気配がここにはあった。
きっとドアの前にでもいるんだろう。


A「何故こんな所にまで…」

智「んぁ、あっ、お、おれを、つけて来たんでしょ…っ」

A「放っておいていいのか?」

智「今、ここに、入れる訳に、いか、な、」


いつからいたんだろう。
最初は気付かなかった。どこから見てたんだろうか。


智「そ、んなの、いいから、っく、んんっ」

A「追い払わなくていいのか」

智「い、いんだよ…っ、そ、れより、早く」


翔が見てる。
実際は見えていないのかもしれない。
だけど、確実に俺の声は翔に届いている。


智「あぁっ、ぁ…、は、やく、イカせて…?」


今にも泣き出しそうな、弱った俺をAに見せ付けた。


A「先に言うんだ…」

智「も、だめだよ…、我慢、できな…っ」


ビクビクと身体を震わせAにしがみつく。


智「お、ねが…っ、も、許して…」


涙を溜めた目で懇願すると、Aは俺に伝わる位に鼓動を高鳴らせ、俺を縛っていたゴムを解いた。


智「んぁ、あっあ、あっ」


解いた瞬間に飛び出そうだった俺の熱の出口を親指で塞ぎ、激しく俺を揺さぶる。
親指はそのままに、ぬるぬると俺を擦る。


智「ああっ、も、だ、めだっ、て…っ、く、あ、あぁっ」


閉じ込めていた熱がやっと解放された。

その安堵と解放感と、揺さぶられ続けた身体の疲れと。

なんて事してくれてんだというAへの恨みと、翔が見ているという不思議な感覚と。


悦びも無ければ罪悪感すら感じない。



俺は、人間の感情を捨ててしまったのだろうか。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ