
不透明な男
第1章 記憶の無い男
さっきより少しだけスムーズに男の熱が進んでくる。
それでも内壁にきつく締め付けられながら少しずつ、少しずつと、ゆっくり俺の中に入ってくる。
智「く…っ」
男「大丈夫だから、力を抜け。」
そんなもん抜けるかよ…
必死なんだコッチは
涼しそうな顔しやがって…
ちくしょう
侵入を拒まないと魂が持っていかれる。
そんな気がしていた俺は力なんて抜けなかった。
自然と強張る身体に抗うかのように、男はぐぐっと進んでくる。
智「うっ、はぁ…はっ」
男「は…ぁ、全部入ったよ…。」
眉をしかめて耐える俺を、男はいとおしそうに見つめる。
仰向けになったからだろうか?未だ圧迫感は凄いが、呼吸が出来るだけさっきより幾分かマシだ。
智「はっ…はぁ…っ」
呼吸が出来ると言っても息は浅く、半開きの口からは苦しそうな音が漏れている。
ずる…
智「う…ぁ」
男がゆっくり腰を引く。
全神経が俺の後ろに集中しているかのようにその感触は、はっきりと分かる。
隙間なんて1ミリも無いであろう場所を動く。
ずるずると引かれていく熱に、内壁が擦れる。
外まで出ずに停まった熱は、再び、ぐぐっと進んでくる。
ぎちぎちと苦しい筈なのに、俺の脳天は痺れてくる。
智「んぅ…っ、ん、あっ」
男は、俺の反応を見ると薄く笑いながら安堵したような表情を浮かべる。
男「そうだよ智…、いい子だ…。」
腰をゆっくりと引いては、ゆっくりと進む。
男はこれをくり返す。
智「んん…は…ぁ…」
苦しい呼吸音しか発せなかった俺の口から、不思議と柔らかく甘い声が出た。
