
お嬢様と二人の執事
第3章 もう一人の執事
「沙都子様、おはようございます」
寝室のドアをノックして、高宮が声を掛ける。
返事がないので、メイドの貴子と優子を引き連れて寝室に入る。
「沙都子様、失礼を…」
そっとベッドに近寄ると、沙都子を覗きこむ。
「高宮さん…」
掠れた声が聞こえた。
「沙都子様…体調が優れませんか?」
昨夜の神山とのことがショックで、沙都子の眠りは浅かった。
それに加え、風呂あがりに身体が冷えたのだろう。
少し風邪を引いたようだった。
「少し…でも平気です。今、起きますから」
起きようとしている沙都子を、高宮は押しとどめた。
「ご無理をなさってはいけません。只今、医者を呼びます。それと、部屋を温かくしましょう」
高宮は手際よく、貴子と優子に指示を出していく。
貴子と優子が部屋を出て行くと、そっと水差しからコップに水を注いだ。
「沙都子様、お水はいかがですか?」
片膝を付いて、ベッドの上にいる沙都子を見上げる。
こんな時の高宮は、まるで子犬のような可愛らしささえ漂わせる。
端正な顔をしているのに、子供のような表情になるのだ。
「ありがとう…」
沙都子は、初めて高宮の顔をみた気がした。
こんな表情をしていたかしら…
不思議なものをみるような気持ちになった。
