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素晴らしき世界

第31章 向かい合わせ

ネットで評判のつけ麺屋は、
夕食時もあり行列が出来ていた。

でも回転率がいいのか、
10分足らずで店内に入る事ができた。

ごちゃごちゃと頭の中で色々と考えるけど、
食欲を誘う匂いが鼻孔をくすぐると身体が
空腹を訴える。

「急にお腹、鳴った。」

「俺も!」

お互いにお腹を擦りながら笑った。


些細な事で共感し合う。


こんな事ですら、
互いのパートナーとは出来ない。


でも今、和也くんとは出来ている。


良いことなのか……

悪いことのなのか……


和也くんはパートナーを
思い出させる存在と同時に
パートナーを忘れさせてくれる存在。

今、その存在の比率は半々。


でも後者になれば……


このまま和也くんと過ごしていけたら
寂しさを埋められるんじゃないかって
考えてしまう。

「麺、太い!」

和也くんは楽しそうに、
厨房で湯切りしたり
盛り付けをする店員を見つめる。


もしかしたら和也くんも同じ事を
考えてるんじゃないかって思ってしまう。


「食べ終わったらつけ汁にスープを
足してそこにライスを入れて食べるのが
この店の定番なんだって。」

「ライスを?へぇー!美味しそう!」

俺の方を見ると嬉しそうに笑った。


それならそれでいいか……なんて。


「ライスまでいける?」

「イケる!」


寂しさを忘れて今が楽しければ……って。


「へい、お待ちー」

和也さんは並で俺は大盛り。


大盛りに毎回するのも癖。

いつも先に食べ終わる雅紀が
物欲しげに俺が食べ終わるを見てた。

『食うか?』って聞くと、
首がもげるんじゃないかってくらいに
勢いよく頷く。

それが毎回続くから、言われても
大丈夫なように大盛りを頼むようになった。


また俺は何を思い出してるんだ。



結局……前者のままなんだ。



いや、都合の良い様に
コロコロ変わっているだけかもしれない。

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