
素晴らしき世界
第31章 向かい合わせ
「家族になったけど、
俺は潤の父親でも母親でもない。
もちろん、子供でもない」
意識を浮上させた言葉に俺はふと思った。
「だって、そういうこと、しないでしょ。
俺はね、潤に抱かれたい。セックスしたいの」
雅紀はどうなりたかった?
雅紀は『恋人』の俺を望まなかった。
『家族になれた』
目尻に皺を寄せて笑う雅紀。
『ずっと一緒にいられるね』
その目尻からいくつもの涙が零れ落ちる雅紀。
雅紀は俺に初めて望んだんだ。
俺が軽き気持ちで『いいよ』と言った
『家族』という関係を……
雅紀の両親は本当に仲が良くて、
どんな時でも一緒にいるって聞いてた。
雅紀にとって両親は
理想の家族で理想の夫婦だった。
だからこそ自分も
そうなりたいって思ったんだ。
でも俺は違った。
「潤から拒否される度、俺は厭らしい
人間なんだって。スケベでヤることしか
頭にない人間なんだって」
俺は潤と同じようにそれを拒否したんだ。
雅紀が初めて俺に望んだことを……
それに今更、気づいた。
「俺、変な奴じゃない?
こんなこと考えてる俺…
頭狂ってるって思われない?」
「そんなこと…
そんなこと思うわけないだろっ!!」
俺は叫んだ。
何かを望むことを否定するのは
雅紀の気持ちを否定するように思えた。
「好きな人に、愛してもらいたいって
思うのは当然なことだろ…」
望むことは違うけど……
自分ができなかったくせに
偉そうなことを口走る。
でも言いたかった。
あなたは間違っていないんだって。
雅紀は間違っていないんだって。
俺はホケットからハンカチを出すと、
流れ落ちる涙を拭いた。
目の前で涙を流すのは雅紀じゃない。
でも雅紀の涙に思えたから……
「櫻井さんも…
笑ってる顔のほうが…素敵です…」
差し出されたハンカチを受け取り、
溢れ落ちていた涙を拭いた。
『翔の笑った顔、大好き』
今、俺……笑えてる?
雅紀が好きだって言ってくれた笑顔で。
俺は潤の父親でも母親でもない。
もちろん、子供でもない」
意識を浮上させた言葉に俺はふと思った。
「だって、そういうこと、しないでしょ。
俺はね、潤に抱かれたい。セックスしたいの」
雅紀はどうなりたかった?
雅紀は『恋人』の俺を望まなかった。
『家族になれた』
目尻に皺を寄せて笑う雅紀。
『ずっと一緒にいられるね』
その目尻からいくつもの涙が零れ落ちる雅紀。
雅紀は俺に初めて望んだんだ。
俺が軽き気持ちで『いいよ』と言った
『家族』という関係を……
雅紀の両親は本当に仲が良くて、
どんな時でも一緒にいるって聞いてた。
雅紀にとって両親は
理想の家族で理想の夫婦だった。
だからこそ自分も
そうなりたいって思ったんだ。
でも俺は違った。
「潤から拒否される度、俺は厭らしい
人間なんだって。スケベでヤることしか
頭にない人間なんだって」
俺は潤と同じようにそれを拒否したんだ。
雅紀が初めて俺に望んだことを……
それに今更、気づいた。
「俺、変な奴じゃない?
こんなこと考えてる俺…
頭狂ってるって思われない?」
「そんなこと…
そんなこと思うわけないだろっ!!」
俺は叫んだ。
何かを望むことを否定するのは
雅紀の気持ちを否定するように思えた。
「好きな人に、愛してもらいたいって
思うのは当然なことだろ…」
望むことは違うけど……
自分ができなかったくせに
偉そうなことを口走る。
でも言いたかった。
あなたは間違っていないんだって。
雅紀は間違っていないんだって。
俺はホケットからハンカチを出すと、
流れ落ちる涙を拭いた。
目の前で涙を流すのは雅紀じゃない。
でも雅紀の涙に思えたから……
「櫻井さんも…
笑ってる顔のほうが…素敵です…」
差し出されたハンカチを受け取り、
溢れ落ちていた涙を拭いた。
『翔の笑った顔、大好き』
今、俺……笑えてる?
雅紀が好きだって言ってくれた笑顔で。
