あなたの色に染められて
第37章 素直にI'm sorry
『あ~ もう…。』
急いでるときに限って尽く信号で捕まったり電車のダイヤが乱れていたりするもんで
『…はぁ…。』
やっとのことで最寄り駅に着き タクシーに乗り込んで目指すは愛しい彼のもと。
『…よいしょ。』
とにかく必要そうな 冷却シートやら常備薬 何日でも看病できるようにと化粧ポーチ等々 バックに詰め込んで
ピンポーン
鳴らしてみたけど
……。
動けないほどキツいのかな。勝手に入っても大丈夫かなぁ
『あぁ…どうしょ。』
ハートのキーホルダーが付いた鍵を見詰めながら一人玄関の前で迷ったが
『よし!』
鍵をギュッと握りしめ変な覚悟を決めた私はゆっくりと扉を開けた。
『…京介さん。』
相変わらずの靴が散らばっている玄関を通り抜け まだカーテンが閉まっているリビングを抜け寝室のドアを開けると
『…あっ。』
ベッドに蹲るようにして眠る京介さんがいた。
***
…ヤバイ…こりゃ相当熱でイカれたな。
『…京介さん…。』
璃子の声が聞こえるなんて。
昨晩 会合からの帰り道。体が震えるほど悪寒を感じた俺。
ガキの頃から無理が祟るとこうやって高熱を出す悪い癖。だから もう対処の仕方はお手のもの。
ベッド脇に替えのシャツやタオル、スポーツドリンクを用意してあとは布団に入るだけなんだけど1つだけ足りないものがあった。
『…京介さん…。』
そう この声の主。一番の特効薬。
汗の滲む額に柔らかな感触が触れた気がしてそっと目を開けると
『…京介さん…。』
熱で俺の頭がイカれたか それともまだ夢の中か。璃子が心配そうに俺の顔を覗き込んでいて
『…大丈夫?』
それでも良かった。璃子を感じられるならまだ覚めないでくれって。
柔らかな感触に手を伸ばすとふわりと甘い香りが鼻につき手を握り返され
『…遅ぇよ…。』
『キャッ。』
その繋がれた手を引き寄せて俺の胸に抱き寄せた。
『大丈夫?』
『…大丈夫じゃねぇ。』
『お薬飲んだ?』
『…今抱いてる。』
すげえ苦しいけど すげぇ幸せで。
『…おまえ来るの遅ぇんだよ。』
『…ゴメンね。』
来てくれて本当は感謝しなきゃいけないのにこんなときも素直になれなくて
『…許さねぇ…。』
久しぶりにこのぬくもりを体に感じてまた瞼を閉じた。
神様…どうか 夢でありませんように…。
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