
(仮)執事物語
第9章 STEP×STEP〔※杜若〕
あたしがお店の中で、揉めていると後ろからクスクスと笑う声が聞こえてきた。
「朝から賑やかだな」
そう言って入って来たのは、マコ兄と綾芽先輩だった。
「おー!真琴君とお嬢様。居らっしゃいませ。どうぞ、もっと中へ……」
二人の姿を見ると救世主が現れたとばかりにニコニコと傍へ寄って行く父。
「真琴君も一杯、如何かな?新しい日本酒が入ったんだ」
「すみません。これから綾芽お嬢様と買い物に行くので……」
そう言ってマコ兄が断ると、父は家で愉しむようにと瓶を包み始める。
「ちょっと!お父さん?これからお買い物に行くのに、邪魔じゃない!!」
「でも、本当にお薦めなんだよ?このお酒……」
父がそう言いながらしょんぼりすると、綾芽先輩が旦那様の分とマコ兄の分を自宅に届ける様にと言ってくれた。
途端に父の顔が輝き出す。
父が調子に乗り過ぎて、熱くお酒の事を語り出さない内に、あたしは莉玖と先輩達の背中を押して店を出た。
そんなあたしの様子を見て、綾芽先輩がクスクスと笑う。
「仲が良いのね。羨ましいわ」
「そんな事ないです。すみません。朝からお見苦しいところを……」
あたしが恐縮してそう言うと、綾芽先輩は首を横に振った。
