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甘く、苦く

第45章 にのあい【現在進行形】





やってしまった。


荒れたベッドを見て
呆然とする。



「にの、おいで」



大野さんが腕を広げたから、
俺はそこに飛び込んだ。



…お互い、同じ大きさだから
サイズはぴったりで。


裸のまま体を密着させてると
直に肌が触れ合って。


少しくすぐったいけど、
それがすっごく嬉しくて。



俺は相葉さんじゃなくて
大野さんを好きになればよかったなあ、なんて。


今ごろ後悔したって
もう遅いのに。

五、六年前の自分を
責めたくなってしまう。



「にの、夜ご飯どうする?」

「んーと…なんでもいいよ。
大野さんが作ってよ」

「…んー、あるもので作るよ?」



いい。

あるものでいいんだ。


だから俺も、
あるものでいいんだ。


相葉さんじゃなくて。

来るもの拒まず。



「…おーのさーん、まだぁ?」

「待ってよー。
あっつ!」

「なにやってんの!おじさんっ」



火傷しちゃったみたい。


けど、これくらいなら
軽い火傷だから大丈夫。



「もー、水で冷やして。
全くアンタは…(ぶつぶつ)」

「…ふふ、にの、
お母ちゃんみたい」



なんて、大野さんが目を見ながら言うもんだから
こっちは恥ずかしくてたまんない。



「どーせ俺は母ちゃんですよーだ」

「えー?いい意味で
言ってるんだけど…」




大野さんは俺に「ありがと」って言って
料理を再開した。



大野さんが料理してるのを見てたら、
そういえば俺もよく相葉さんに
料理作ってあげたなあ、なんて思い出して。



鼻の奥がツンっとして。



こんな顔見られるの恥ずかしいから
テーブルに顔を押し付けて。


声を押し殺して泣いてた。

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