
甘く、苦く
第81章 お山【Now I'm ready.】
ぎゅ、としっかり抱き締めて、
耳元で囁く。
「好きだよ、愛してる…」
だから、ずっと俺といてよ。
これ以上、離したくない。
「…ふふ、俺もだよ。」
俺を見つめる瞳。
俺だけが映っている瞳。
「そろそろ帰ろう?」
智くんが体を離して、
ふわりと笑う。
「そう、だね。
明日は仕事?」
「うん。午後から。…翔くんは?」
「俺も午後からだけどー…」
「…じゃあ、よかった。」
よかった、って、…なんの?
俺、期待しちゃってもいいのかな。
今夜の智くんは、
なんだか大胆発言が多い。
「ふー、疲れたぁ…」
リビングに向かうと
ソファーに雪崩込む智くん。
そのまま眠たそうにしてたけど、
すぐに
「お風呂入るぅ」
って、覚束無い足取りで
向かうもんだから、心配で。
「俺も一緒に、いい…?」
って、少し勇気を出してみた。
そうしたら、
本当に嬉しそうな顔をして
「んふふ、いいよ。」
って笑ってくれたんだ。
…男ふたりが風呂って、
誰得なんだろうな。
