
DAYS
第32章 オールリクエストshort story♡
S side
「ただいま…。」
深夜2時をまわったころ。
静かに、ゆっくりと
玄関からリビングへと向かう。
もうこの時間になれば、
雅紀だって起きてはいない。
疲れてるだろうし、
そっちのほうが俺も嬉しい。
リビングのドアを開ければ、
「…ぅわっ。」
ソファーの上で、体育座りをして
じっとうずくまってる影。
すぐに雅紀だと分かった。
ってか、雅紀しかいるはずがない。
「…ただいま?」
声をかけても、
俺のほうを見ようとはしない。
それどころか、ぴくりとも動かない。
寝てるのかと思って、
雅紀の肩を掴んで優しく揺すってみると
その手をぱっと跳ね返された。
跳ね返された右手が、やけに痛い。
こんなのは初めてだった。
「雅紀?」
少しのイラつきを抑えつつ、
あくまで優しい声色でたずねる。
それなのに、雅紀はずっと黙ったまま。
右手の痛みが、じーんと響いてくごとに
イライラが募っていく。
「なぁ。」
「…。」
「雅紀、ほんとに何なんだよ。」
抑えきれない不機嫌さを
隠そうとしなかったからか、
声のトーンは自然と低くなる。
「雅紀!」
「…よ。」
「は?」
「もう…別れよ?」
やっと顔を上げて、俺を見た。
かと思えば、雅紀の口から出たのは
信じ難い言葉だった。
