
1人じゃなくて。
第8章 No.8
───チュンチュン──
『奈瑠ちゃん、お皿並べてくれる?』
「あ、はい!」
朝だ。
憂鬱な朝。
起きたら目が痛かった。
自然と涙が出て、
《泣いてない》
否定したくて、ずっと拭っていた。
しかし
加奈子さんの笑顔が私の気持ちを吹き飛ばした。
綺麗で、
大人しそうに見えて
意外と茶目っ気溢れる人で………
本当に、光さんの奥さんで
一樹さんの母親なのかと疑った程。
どことなく、歯を見せて笑うときは一樹さんに似てるんだよなぁ。
それが逆に、加奈子さんへの罪悪感となった。
「私、貴女の息子さんに襲われました。」
口に出して言えたら…どれだけ良いことか。
『大丈夫?なんかちょっと顔色悪いわね……食べれそう?』
「はい、全然食べれます。美味しそうですっ」
加奈子さんの手が、私のおでこに伸びてきた。
味噌の匂いが少しする。
なんか気持ちいい…
初めての加奈子さんの朝ごはんは
じゃがいもが入った味噌汁
白ご飯
鮭のホイル焼き
だった。
