
誰かお願いつかまえて
第9章 女たちの戦い
「こちらです」
ユズの部下らしい子に個室に案内してもらうと、すぐにユズも入ってきた。
――私が頼んだスーツを持って。
「お待たせ!たぶんサイズ大丈夫だと思うんだけど」
そう言って渡されたのは、1度モデルさんが着たきりだという紺のスーツ。
……それは偶然にもズタズタに切りつけられた私の持っていたものと似ていた。
「感謝しなさいよ!?引っ張り出してくるの大変だったんだから――――」
これを着たら、お客様のところに行ける。
…行かなきゃ、いけない。
そのスーツを見て不意にそう思った。
"私、幸村さんにはその紺のスーツが一番似合うと思います!"
いつか聞いた可愛らしい声と、人を虜にする南ちゃんの笑顔。
(でも………っ!)
信じていたのに裏切られた。
あまりに身近にいたからこんなに傷つくんだろうか。
(私が、何をしたっていうの………?)
毎日可愛がって近づいていたのが疎ましかったのか。
なにかとミスが多く、南ちゃんの仕事を増やしてしまったからか。
(それともやっぱり―――)
私があの2人に相応しくないから……?
