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サバイバルヘルパー

第4章 小梅の本気惚け

 見ると、小梅が「サヨ〜ナラ〜」と言いながら、大きく手を振っていた。




 船にむかって。


「えっ……」


 船は沖に向かって、去っていく。


「えっ!? えっ!? えっ!?」


 俊輔は浜に到着すると、小梅を押し退けて、沖に目をやった。


 船は、あの岩の上で見た時よりも、小さくなっていた。


「待ってぇーっ!! ここにいるんだよっ!! 待ってぇぇぇーーーっ!! たぁーっ、すぅーっ、けぇーっ、てぇぇぇーーーっ!!」


 俊輔はかぎりなく大きな声を出し、大きく、跳び跳ねながら手を振った。


 だが、ついに、船は水平線に溶け込むように消えていった。


 俊輔は愕然とし、ヒザをついた。


「え……なんで? なんで? なに? えっ?」


 もう、二度と戻ってくることはない船を、ずっと見送っていた。


 小梅の方を、唇を震わせながら見た。


 太陽の光を浴びながら、小梅はニコニコと笑う。


「なにやってんだよ……婆さん」


 俊輔の肩が震えだした。


 自然と両拳を握っていた。


「ば…婆さん」


「なんですかぁ?」


「なんで……追い返した?」




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