
お嬢様♡レッスン
第124章 【番外編】男達のバレンタイン事情
早朝。
葛城は左腕の重みが急になくなり、そして肌寒さを感じて目が覚めた。
ガウンを纏う衣擦れの音。
綾芽がベッドから降りて身に纏ったのだろうと、その音を聞きながら思う。
こんな朝早くに何をする気なのかと、彼は目を薄く開けて彼女の動向を見守った。
綾芽は、机の引き出しを開けると、綺麗にラッピングされた箱を一つ、取り出す。
昨夜、遅い時間まで彼女が一つ一つ丁寧に包んだ、元執事達への贈り物だ。
こんな朝早くに、そんな恰好で誰に渡しに行くというのか。まるで襲ってくれと言っているみたいではないか。そうハラハラしながらも、葛城は身を起こさず、彼女の背中を目で追う。
綾芽は扉の取っ手に手を掛ると、音を立てないようにそれを引き、扉の向こう側を覗く様に顔だけを廊下に出した。
葛城がその後姿を見つめている中、綾芽は何かを目に止めた様に、身体をピクリと反応させ、その動きを止めた。
一体何をしているのだろうかと、気になった葛城は、彼女の傍まで歩み寄る為、ゆっくりと身を起こした。
すると綾芽は突然、くるりとこちら側を向きスタスタと机まで歩くと、手にしていた包みを机の中に戻す。
「どうしたんです?」
