テキストサイズ

未知夢

第12章 好機

「でも、ここに父と相談するのはこんな話じゃなかったの」


 綾子は屋上から見える街並みを眺めながら言った。


 それを見て、不機嫌そうな表情を浮かべた隆夫が言った。


「そうだよ! その話を聞く前にあんたが来て……」


「待って下さい」


 隆夫が言い終わる前に繁が口を挟む。


「綾さんのお父さん。これだけあったら借金は返済できますか?」


 繁は持っていたボストンバックをつき出した。


「なんだねそれは……」


「今、俺には必要ないもの。それをそのままあんたに預ける。いや、差し上げる」


 大きく息を吸うと、覚悟と決心を決めたのか、口をキュッと結んで頷いた。


「憧れだったんだ。あんたの娘さん。俺、すごいファンだったんだ。だから、綾さんに幸せになってもらいたいからこれをお渡しします」



ストーリーメニュー

TOPTOPへ