
ネムリヒメ.
第15章 イチゴタルト.
………………
「タルト…っ……!!」
そう小さく呟く自分の声で目が覚めた
………食べないで寝ちゃった!!
残ってるの!? 残ってるよね!!
霞む目を擦ると徐々に視界が明るさに慣れていく
そして真っ先に目の前に飛び込むのは、明るい綺麗な金色の髪で
そっか…
昨夜は葵くんの部屋にいたんだけど、タルト食べる前に疲れて寝ちゃったんだ…
そんなコトを思い出しながら、ボーッとしたまま目の前にある相変わらず綺麗な葵くんの寝顔を見つめる
春の朝の空気はまだ冷たくて、差し込む柔らかい日差しが暖かい……んだろうけど、
なぜかアタシが暖かいのは日が差してない背中で…
え……!?
葵くんは横を向くアタシの正面にいるのに、後ろから回されている腕に 確かに感じる人の体温
「…………!!」
なにこれ!?
寝起きにはちょっと理解し難い状況に驚いて身を捩って寝返りを試みる
が、
う…動けないんですけどー!!
そこで初めて理解する、後ろから誰かにすっぽりと抱き抱えられているという状況
「っ……!!」
ぇ、
え、ちょっと…!?
すると…
「おはよ…」
耳元から甘く掠れた低い声がして、布が擦れる音と一緒にタバコの匂いに混じった深いムスクの香りがした
