
凍夜
第5章 渇望
私は、バーまつもとで調子に乗ってカクテルを立て続けに飲んだせいでかなり酔っていた。
レイジの名刺をこっそりしのばせたその体でマサシと腕をくんで歩いていた。
鴨々川沿いに立つ柳の木葉が夏の夜風に揺れて涼しげだった。
橋の上で私とマサシはきつく抱きあった。
道行く人々が視線を投げかけたけどお構いなしに。
その後、私とマサシはその川沿いの道を静かに歩き出した。
まるで何かの儀式のようにお互い一言も話さなかった。
私とマサシは、色とりどりの明かりが誘うように揺れるのを確かに目の端でとらえていた。
それでも私達は、無言のまま石畳の道を踏みしめていた。
べたべたした恋人達が通り過ぎてゆくと余計私達は腕をくむ体に力が入った。
川のせせらぎが、しゃらしゃらと聞こえ、女の甘えたような笑い声が通りに響いた。
不意にマサシが早足になった。
周りはラブホテルだらけだった。
私とマサシはお互い見つめあうと無言のまま頷きあった。
