
凍夜
第3章 花
それからしばらくして、アリサさんは肩に百合の花と蛇の刺青を入れた。
百合の花に絡みつく蛇のモチーフは、まるでアリサさんとレイジの姿を映してるように、感じた。
「俺に断りもなく、勝手に、入れるなんて!」銀さんは怒っていた。
当時、高級ソープで働く女性は勝手に、髪を切ったり、イメージを変えることは敬遠されていた。例えば、長い髪で女らしい姿の女性が、いきなりベリーショートになったらお客が引いたりすることもあるし、刺青も同様に、ドン引きされることもまれではなかった。
ある夜、銀さんの言葉を遮り、アリサさんは、レイジの店に、出掛けて行った。
「今夜は蒸すわね。」
アリサさんは髪をアップに、結い上げて、私達に、背を向けると、夜の町に消えた。
私の目に、百合の花と蛇が、やけにせつなく刻まれた。
まさか、あんなことが起きるとは……。
