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【S】―エス―01

第24章 兄弟

 刹那本人はどうだか分からないが、瞬矢は彼を弟だと思っていたかった。まだ、刹那を救いたいという想いがあった。


「――!」


 そこで瞬矢はあることを思い出す。そして閃く。


 よもや刹那を救えるかもしれない秘策――。だがしかし、それは下手をすれば自らをも落命しかねない危険な賭けだった。


「……やるっきゃない、っか」


 軽く息を吐き、自分自身へ言い聞かせるかのように独りごちる。


 突如閃いた秘策。瞬矢はそこに、決して勝ち負けでは得られない何かを見出だしたのだ。


 ずっと握っていた左手に、更なる力を込める。


 空気は打ち震え、壁に走る亀裂は、床……そして天井へとその範囲を広げていた。


 大小のコンクリート片が宙に浮かんでは粒子分解されてゆく中、右足を後ろへ引き体勢を低く構えた。


「次で決める」


 刹那も、その言葉を聞き同意するように今少し体勢を低く身構える。


 窓ガラスが割れる音を合図に両者地を駆り、人知を超えた力の形容である瞬矢と刹那の双眸は、妖しく光るその奥に互いを捉える。


 瞬く間に2人の距離は肉薄し、瞬矢は刹那の眼前に光の粒を纏ったその左拳を繰り出す。
 

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