
デスサイズ
第2章 Episode 2 痛み
「だ、誰に、頼まれた? どう、せ、頼まれたんだろ? 言えよ!! ペットの飼い主か? 従業員かっ!? …まさか、千加子か…!?」
喚く林の言葉に黒斗はゆるゆると首を振る。
「誰にも頼まれていない。言っただろう、犯した罪に対する罰を受けてもらう、と。これは、お前への罰だ」
それを聞いた林は、怒りを露に黒斗を鋭い眼光で睨みつけた。
「何が罰だっ!! 何で俺が!! たかが畜生を殺したぐらいで、殺されなきゃなんねえんだ!!!! ふざけんじゃねえぞクソガキ!!」
痛む身体を叱咤し、林はゆっくりと立ち上がり、フラフラと机の上の包丁を手に取り黒斗に向けた。
理不尽への怒り、生への執着、殺されてたまるかという強い意思。
それだけが、満身創痍の林を突き動かしていた。
じりじり、と黒斗ににじりよっていく。
「いつも、いつも俺ばかり責められる!! 誰も俺の気持ちを分かってくれやしない!!」
「じゃあ、お前はペットを殺された飼い主の気持ちが分かるのか?」
思わぬ言葉に、林は足を止めた。
「んなもの…分かるかよ!!」
「従業員や妻が離れていった理由は?」
「知らねえよ!! 所詮アイツらのワガママだ!!」
呆れたような溜め息を吐く黒斗。
「自分の気持ちばかりを押しつけるからだ」
大きく目を見開く林。
「相手の気持ちを分かろうとしない、自分の気持ちを分かってもらう努力もしない。押しつけることしかせず、人の話を聞こうともしない」
