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第2章 Episode 2 痛み




その日の夜





「バカをぬかすな! ただでさえ人手不足だっていうのに!」

カーメイク林の社長である林 菊三(きくぞう)は、自宅で電話ごしに、怒鳴りちらしていた。


林の怒りの原因は、従業員の1人が辞職を申し出たことである。

彼の会社は塗装、鈑金(ばんきん)を行なっており、自営業の小さな工場ではあるが、そこそこ知名度がある。

だがここ最近、従業員達が次から次へと辞職していき、深刻な人手不足に悩まされていた。

これ以上、人を減らさない為にも林は必死に食い下がるが、従業員は考えを変えない。

「どこにも雇ってもらえず、途方にくれていた貴様を拾ってやった恩を忘れたのか!!」

『それは本当に感謝しています。……ですが…………限界なんです。もう、林さんのやり方には付いていけない。僕、明日故郷に帰ります。今までお世話になりました』

「ま、待て…」



ツー、ツー、ツー……



「あのクソ野郎がっ!!」
電話を切られた林は、乱暴に携帯をテーブルの上に放り投げ、頭を抱えた。

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