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第3章 Episode3 挫折




翌日の朝



ガチャン ガシャン ドンガラガッシャン


それほど日は経ってない筈なのに、随分と懐かしく感じる騒音で黒斗は目を覚まし、いつものように制服に着替えてダイニングに向かう。


「……橘」

ダイニングに居るのは、可愛らしいピンクのフリル付きエプロンを身に付けた鈴だった。


「クロちゃん、おはようさん! 朝ごはん出来とるで!」

そう言って鈴は、手に持っている黄身がグチャグチャに潰れている目玉焼きが乗った皿を、テーブルに置いた。

「……もういいのか?」

椅子に腰かけながら黒斗が言った言葉に、鈴は頷く。


「……ウチが泣いてばかりじゃ、リンも安心出来へんし……それに、ぎょうさん泣いたらスッキリしたわ」

黒斗に微笑む鈴。


「それにクロちゃん、ウチが朝ごはん作ってやらな、何も食べへんで学校に行ってまうからな! やっぱりウチがおらんとアカンわ!」


「だから、お前は俺の奥さんかっての」


呆れたように黒斗が呟くが、鈴は気にせずテーブルに着き、目玉焼きを頬張りはじめた。



「……橘、今日の放課後、ヒマか?」

「へっ? いや、まあヒマやけど……何でや?」


「ああ、ちょっと会わせたい奴がいてな」

「会わせたい奴? どんな人やの?」


キョトンとする鈴に、黒斗は「後の楽しみだ」とだけ呟いて、目玉焼きを口に運ぶのだった。

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