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第3章 Episode3 挫折




「お待たせー!」

コーヒーを入れ終えた玲二が戻り、部屋の中央にある丸いテーブルへ持っていたカップを置いた。



「……あの絵、お前が描いたのか?」

コーヒーを啜りながら黒斗が問う。


「…………うん。お母さん、お父さんと一緒にピクニック行った時のことを思い出しながら描いたんだ。まあ、小さかった頃にだけど」


一瞬の間があった後、気まずそうに玲二が答えた。


「……本当は絵が好きなんだろ?」

「ま、まさか! オレ、絵心無いって言ったじゃん!」

「描きたくても描けないんじゃないのか? 手が震えて、鉛筆や筆を落としてしまうから」


黒斗の言葉に、玲二が息を呑んだ。


「み、見てたの…?」

「ああ」


それを聞いた玲二は、ガックリと肩を落とし、深い溜め息を吐いた。


「……ごまかして、ごめんなさい……兄貴の言った通り、オレは絵が大好きなんだ。 ……でも……昔の事件がきっかけで描けなくなっちゃったんだ」


「昔の事件?」

「話すと長くなるんだけど……」


前置きをして、玲二は“昔の事件”について詳しく話し始めた。

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