
デスサイズ
第3章 Episode3 挫折
「……まあ、いい。じゃあな」
下履きを持って美術室を後にしようとする黒斗だったが、不意に右腕をグイッと引っ張られる。
「あのっ! 待って下さい! お、お願いがあるんです!」
「お願い……?」
渋々と振り向いた黒斗の目に映る玲二は、非常に真剣な表情をしていた。
「何だ? 言ってみろ」
「はい……」
黒斗の右腕から手を離し、1、2歩ぐらい後ろに下がる。
ゴクリと生唾を飲み込み、玲二は勢いよくお辞儀をした。
「お願いします!! オレを舎弟にして下さい!」
「…………」
「…………」
長い長い沈黙が、美術室に舞い降りた。
腕を組んで無表情のまま、玲二を見下ろす黒斗。
頭を下げたまま動かない玲二。
「……今、何と?」
「オレを舎弟に…」
「聞こえなかったという意味じゃない」
冷静にツッコミを入れると、黒斗は頭を抱えた。
「舎弟って何だ、舎弟って。どうしてそうなった」
気持ちを落ち着かせようとするが、あまりにも予想外かつ突拍子なお願いに、さすがの黒斗も動揺を隠せない。
