
青い桜は何を願う
第7章 哀情連鎖
この、さくらが贔屓にしているメゾンは、英国の上流階級の少女の装いがコンセプトの鍵になっていて、毎度、古風でありながらとびきりドレッシーで可憐な感じのロリィタスタイルが展開される。
ここにはさくらの、否、リーシェの失った世界が詰まっていた。
氷華にこんな言葉はなかった。だが、さくらは今で言うクラシカルロリィタの姿をしていると、特に、散った後の桜みたいなくすんだピンク色のフリルで装っていると、カイルが見付けてくれる気がしていたのだ。
さくらの今眺めている広告の、撮影セットの背景は、リーシェの私室を思い出す。
モデルの少女の柔らかに巻いた栗色の髪は、リーシェの金髪とはほど遠いが、却って今の自分自身を重ねられる。
さくらも、かつてはこんな、重厚な家具の並んだ優雅な部屋で、懇ろな貴族達とアフタヌーンティーを楽しんだ。仲の良い同性の貴族とはドレスや化粧やアクセサリーの話で盛り上がったし、特に仲の良かった友人は、髪を結ってくれたりした。
「っ……、……?!」
本当に、友人、だったのか?
さくらは、また、正体不明の釈然としないもどかしさに迫られる。
やはり、今月だけでも愛読誌を手に取るのは控えた方が良かったろうか。
さくらは頁をめくりかけた瞬間、ぞっとした。
プリンセスの作り物の私室を気取った写真の背景、その一角に飾ってあった小さな小さな塔の模型が、明々とした焔に飲み込まれた錯覚が見えたのだ。
