
スキをちょうだい。
第8章 好きをちょうだい
かなでの母親は、親である前に女であった。
男と付き合っては、尽くし、フられた。
かなでは、そんな母親についていくしかなかった。
男の職場や住んでいるところに合わせて、いろいろな土地を転々とした。
おかげで幼稚園に通っても、友だちは一人も出来なかったし、作ろうという気にもなれなかった。
幼いながらに、諦めていたのだ。
無意味なことだと。
悲しいことだと。
でも、家に帰っても、自分を見てくれる存在はなかった。
ー誰もボクをみてくれない。
ーボクはひとりぼっち。
そんなある日のこと。
一人きりで砂をいじる彼に、元気な声が降り注いだ。
「かなでくん!」
見ると、知らない男の子が立っている。
「だれ?」
首を傾げると、男の子は大げさなリアクションをとった。
