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3月の僕たち

第5章 雑談5

「こうしていると天使なんだけどなぁ」


 圭一が慶矩の鼻をつまむと、息が苦しいのかパッと口を開ける。


「ブッフ、バカ面」


僕が笑っていると圭一がダイに話しかける。


「慶矩はよく言えば大らかだけど、脱衣所で兄貴が男といちゃついていようが平気じゃん?
禁忌的概念がないというか・・・感性が鈍いよな。
こんな奴と遠距離なんて大丈夫か?」


「ダイはとても繊細で相手に尽くすタイプなのに、この感性の違いで苦労するのは繊細なダイだろう、つらいだろう?」


 僕の言葉にダイが苦笑した。


「どうだろう・・・今までも多くは望まないようにしてきたから、案外大丈夫だと思う」

「そうだったんだ・・・。ごめんもっと相談に乗れたらよかったね」

「これからは俺たち一緒に暮らすんだから、いくらでも協力するからな。遠慮するなよ」


 圭一の言葉にダイがふいに笑った。


「フフッ、藤蔭で長い事僕を疎んじてきた山口君からそんな言葉聴くなんて・・・変な感じ」

「あああ、わるかったなぁ。
俺にとって泰弘が一番だったから、ダイの身代わりにされてるせいで泰弘が苦労していると思ってきたから・・・」

「でも、僕の協定の件がなくても泰弘君はマドンナだったと思うよ。僕も大好きだった」

「ダイが僕を好いていたのは、慶矩の兄貴だからじゃないの?」

「ううん、可愛いし堅実で温厚で人間味のある感じ。
僕みたいなのにも優しかった」


「ダイ・・・」


なんだかしんみりしてしまった。

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