
エスキス アムール
第54章 仲直りしよう
矢吹は知ってて…
木更津にひどいことをして…
ようやくわかった。
木更津がどうして矢吹のことをあんなに警戒するのか。
二人はもう会って話していたのだ。
俺の知らないところで。
だから……
「もし、それで光平くんとギクシャクしちゃって嫌な思いさせたならごめんね。」
「……あ…?」
「でも……でもね、それでも……波留くんには……僕……」
「あ!!!おい!!、おい!!
矢吹!!お母さん!ほら!!」
矢吹がなにか言葉を紡ごうとしたとき、気がついた。
矢吹のお母さんの手がピクリと動いたのに。
見間違いかと思ったけど、目を凝らして見ると、また動く。
そのまま視線を顔に移すと……、
開いたのだ。瞼が。
ゆっくり、すーっと開いた。
思わず矢吹を叩いて、お母さんに近づく。
急いでナースコールを押した。
「……っ、か、母さん……っわかる?母さん!!」
矢吹のお母さんは彼の問いかけに弱々しくも頷いた。
よかった。
本当によかった。
ほっとして思わずその場に座り込む。
それと同時にナースたちが入ってきて、喜びの声をあげた。
