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エスキス アムール

第54章 仲直りしよう






「波留くん……」




そして夜が明け朝になった頃、俺は少し眠っていて、矢吹の声で目が覚めた。

とはいえ、仮眠程度だからまだ眠くて。
半分夢の中。

手はずっと握ったままだ。
握っている手を握り締めて、一生懸命目を開けた。


矢吹は下を向いたままで、こちらを見ていなかった。




「……ん……?」

「波留くんは、光平くんのこと好き?」

「……?!」


なんで知っているのという驚きで、鼓動がはねあがり、一気に目が覚める。


「えっ、な……え?!!」

「やっぱり光平くんは言ってなかったんだね…」

「?!」



待て待て待て。
話が見えない。


なに?木更津が言ってなかったって。
なんで矢吹は俺たちのこと知ってるの?!


俺が驚きで、口をぱくぱくしていると、分かりやすいよねと言って矢吹は笑った。




「僕ね、波留くんのこと、いいなあって思ってたんだ。
だけど、二人で食事してるの前に見かけたりして。
お揃いの時計もしてるし。すぐに気がついたよ。二人が付き合ってるって。

気がついたんだけど…気がついたから。
僕ね、光平くんに少しだけ酷いことしちゃった」


「酷いこと?」

「二人の仲が悪くなれば面白いって思ったんだ。」




矢吹はそう言って握り締めている俺の手を撫でた。






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