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エスキス アムール

第43章 だから言ったのに。



「お前さあ。
あんなにゲイサーに追い回されて、レイプ未遂にもあってさ。
あんなに、嫌がっててさ。

付き合うやつはみんな女の子だったじゃんかよ。
それをお前…!!」


「……っ、」





まるで、胸ぐらを掴んでくるかのような勢いで要は声を荒らげた。


思わずびくりとして、目を瞑る。



シンと、
静寂が訪れたけど、その中に木更津が珈琲を啜るズズという音が響いた。



流石だ。
こんなに恐ろしい顔をしたやつに彼は全く動じていない。

こういうことには、特に要には、どうしても萎縮してしまうタイプの俺に対して、木更津は恐らくかかってきたら笑って反撃するタイプの人間だろう。



『僕に手を出したのが悪いんだよ?』

なんて言って、笑って人を殴っているタイプだと思う。

…鬼畜だ。




最初こそ、さわやかな頭の切れる青年だと思っていたけど、最近になって、彼の強引なところも知り、彼の腹黒い部分もよく見えるようになった。


要は俺と同い年だから、木更津からしてみれば少しだけど年下だし、なんとも思っていないはずだ。


むしろ、お前に関係ないだろうくらい思っているかもしれない。




「そのお前がさ。」

「……っ」

「ほんっとに…」

「……っ」



こんな時まで木更津の事を考えるようになった俺も、なかなか成長したなと思うけど、

我に返って事の重大さに気づき、要の次の言葉を怖々としながら待つ。




「ほんっとうにお前は…!!」

「…っ、…っ、」







「ホモになるなんてな!
アッハッハッハッハッハ!!!」







……、へ?



「アッハッハッハッハッハ
あーもう、可笑しくてしかたない。
クククク」


要はお腹を抑えて、笑い転げていた。

てっきり怒鳴られて説教にまでもつれ込むかとお思っていた俺は、呆然として木更津を見ると、彼も手を叩いて笑っている。



………おい。









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