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ふぁざー × こんぷれっくす

第5章 ファスシネイション

ちょっとおセンチになった自分を悔いる。


ガックリと肩を落とすと、その隙にと言わんとばかりに清水がママの誘いに乗ってきた。


「いいんですか? いきなり来たのに、お昼まで頂いてしまって」

「えぇ、良かったら。風香が清水くんと出かけた日、主人と手打ちうどんを作ったのよ。多目にあるから、食べて貰えたら助かるわ」

「手打ちうどんですか! それは美味しそうですね。是非、食べてみたいです」


本気なのかお世辞なのか、はたまた作戦なのかは分からないけど、清水はノリノリで手打ちうどんに食い付いてきた。


その清水の態度に、一気に不快感が込み上がる。


「えっ! 本気!?」

「ん? どうして? 凄く美味しそうじゃん」

「そりゃパパのうどんは美味しいけど……少しは遠慮しなさいよ!」


百歩譲って清水がお昼を食べて行くのは許すとしても、パパが作ったうどんを食べられるのが凄く嫌だ。


どんどん小田切家が、清水に侵食されてしまう。


だけど私のこの気持ちが、伝わる訳もなくて――――。


「風香! 家まで送ってくれた彼氏になんてこと言うの! 本当にごめんなさいね~。冷やしがお勧めなんだけど清水くん大丈夫かな?」


ママはすっかり、清水の味方だ。


そんなママに、清水はニッコリと爽やかに微笑む。


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