テキストサイズ

暗闇で恋しましょう

第22章 変化

ぐちゃぐちゃの頭では、何1つ纏まる気配がないけれど。


それでも、たった一言。それだけでいい。


どうしても言わなきゃいけない言葉があったはずなんだ。



なんで、なんでそれすらごちゃごちゃに埋もれて、見えねぇんだよ………

あー、くそ。なんか、情けなくて泣きそうに











「ひぃちゃん」



すっと曇りなく響く、いつもの呼び掛け。


瞬間、俺の頭の中のごちゃごちゃが払われ、一気にクリアになっていく感覚を得る。


あぁ、こんなことがいつしかもあった気がする。


いつもは煩いと感じるこいつの呼び掛けは、なぜこうも俺を導くのか。


思っていれば、自然と口は動き出し



「……ごめん。ごめん、なさい」



そんな簡素な言葉を吐き出した。


目の前の杏の顔は、思っていた言葉を得られたようで、満足そうに緩んで笑顔になった。



「よし!」



犬宜しく、わしゃわしゃーと頭を撫でられる。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ