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暗闇で恋しましょう

第12章 1つ、また、1つ 嫌な、こと

だけど、それだけを頼りにするのは些かリスクが大き過ぎる。


杏が俺の歩くスピード、癖さえも把握しているというなら話は別だが。


(というかそうであったら、普通に引くので違ってほしい)


ここに住まうのは勿論俺らだけではない訳で。


つまり、杏はこの音が響く度に、玄関先にスタバっていたことになる。


それっていうのは、酷く健気で献身的すぎる。


本当に………



どれだけ、俺が、好きなのかと………



俺は、それを自覚してはいけないと感じたために、そこまで踏み入って聞いてはいない。



ずるい、男だよ。本当



まあ、なんだ。


その理屈でいくと、今回も、と思ったが、そういえばあいつ眠気に殺されていたんだった。


というか、よく考えたら、様子見ってなんだ。


あの様子から推測するに、布団にくるまりおねんねしてるのが見受けられる程度なのでは……?


よく考えなくても想像できた状態。



………だけど、万が一。万が一ってことがあるだろう!



眠っているのに万が一って何があるんだよ



と冷静に突っ込むもう1人の俺は無視し、鍵を開ける。

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