言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
「……その場所を聞きてえんだけど」
俺が睨んでるのを全く気にしていない様子でエリカは酒を一口飲んだ
そして俺を見て微笑む
「もちろん教えてあげる。敦史がその剥き出しの牙をしまってくれたらね?」
余裕な顔しやがって
ふざけんな
「兄弟とられて、怒らねぇやつがいんのか?」
俺の質問に一瞬きょとん、とした顔をしたエリカはその直後高い声で大笑いをした
「あはははははっ」
「チッ…………んだよ?」
「あつし……っ、それは……あははっ……」
尚も笑い続けるエリカに苛ついて、机にあった酒の中で一番高いものを掴んで瓶からそのまま飲む
そしてその瓶を勢いよく机に叩きつけると、周りの客とキャストが一瞬こちらを見た
「あー……もう、敦史?乱暴しないの」
一通り笑ったエリカは俺に優しい口調で注意してくる
くそ
むかつくな
俺の酒瓶を持っていた手を優しく包んだエリカがまた俺を見て微笑む
「だって敦史可愛くて。お兄ちゃんが心配なんでしょう?」
「……あ?」
俺は掴まれていた手を勢いよく振り払った
「なんだ?それ」
エリカは尚も微笑んでいて、何時までも崩れないそれが不気味だと思った
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