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言葉で聞かせて

第11章 記憶


「千秋さん……良かった……本当に良かった……」


悠史さんが涙を流しながら僕をきつく抱き締める

すると反対側の敦史さんも僕を抱き締めた
涙は流していないけれど、さっきと同じ険しい顔


「記憶、戻ったんだな……」


そして耳元で悠史さんと同じように「良かった」と呟かれた

でも僕にはひっかかっるものがあって


「記憶……?記憶ってなんですか……?」


と二人を見上げながら尋ねる
すると


「えっ……!?」
「……覚えてねぇのか?」


と二人に驚かれてしまった


覚えてないって……言われても……
なんにもわかんないし


全然そんなことないんだけどちょっと自分が責められてるみたいに感じてしゅんとしてしまう

僕のそんな心情を察した二人が慌てて「そうじゃなくて」と取り繕った


「いや、まぁでも今はいいよ」
「うん。千秋さん、後できちんと説明しますからもう少しだけ僕たちに抱き締められていて下さい」


二人はそう言うとまた僕の首筋に顔を埋めてぎゅう、と手に力を込める


もう!
なにかわかんなくて僕だけ置いてけぼりみたい


「……」


でも説明するためにすぐ離れるの、僕もちょっと嫌だから
もう少しだけ二人に包まれていたい

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