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言葉で聞かせて

第11章 記憶


鳥の囀りが窓から聞こえる朝

瞼を開けると目の前に広がったのは硬いアスファルトでも無機質な病院の天井でもなく、見慣れた部屋の天井だった


どうして?


まだ寝惚けた頭で考えながら少し身じろぎすると、何故か身体が重い

下に目線を向けると僕の身体に巻きつくように乗っかった二本の腕が目に入った

何も考えずそのうち一本を辿って目線を右に動かすと


なんで……?


そこにいたのは敦史さん
反対側に目線を向ければそこには悠史さん

僕は2人に両側から抱き締められて眠っていた


何故か両目から涙が出る


まだ都合のいい夢を見ているのかもしれない、と腕を抓ってみるけれど、そこには確かに痛みがあってこれが現実なのだとわかった


何で車に轢かれそうになった時からこんなことになったのか訳がわからなくて、とにかく状況を理解しようと身体を起こす

起き上がって見てみても敦史さんは敦史さんだし、悠史さんは悠史さんだ
そっくりさんでもなんでもない

部屋は幾度となく入った敦史さんのもので、今ではもう懐かしい香水の匂いがする

寝てしまっている2人を起こしても自分が混乱していて何も出来ないから、とりあえず起こさずに立ち上がった

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