
言葉で聞かせて
第11章 記憶
千秋さんを探しに行くか、仕事に行くか
でも置き手紙は雑とはいえ明らかに千秋さんの字だし、心配いらないのかな
「敦史……」
「探しにはいかねぇ。俺たちはこれ以上仕事休めねぇぞ」
「……」
確かに
僕達は最近色んなことがあって仕事を休みがちだった
別に千秋さんが何かに巻き込まれた様子でもないのに休むのは厳しい
「そうだね。仕事に行こう。メールだけ入れておくね」
「あぁ。頼む」
僕が携帯を操作し始めると、敦史は弱い力で机を拳で殴った
あっさり仕事に行くなんて言うから何とも思ってないのかと思ったけれど、やっぱりそんなことないよね
敦史だって不安なんだ
「今日はアフター行かないよ。その代わり、仕事は完璧にしよう」
「……あぁ」
僕達は朝食は適当に済ませ、家をいつもより早く出て仕事に向かった
仕事が終わったのはいつもと同じ時間
控え室に戻ってすぐに携帯をチェックすると、千秋さんからメールの返信が届いていた
僕が送った『今日、夜には家にいらっしゃいますか?』というメールに対して千秋さんの返信は『もう家に帰っています。』とだけ
メールを受信していたのは日も沈んだくらいの時間だ
