
言葉で聞かせて
第10章 再来
次の日千秋は昨日より低いテンションで部屋から出てきたが、態度はここ最近と変わらなかった
「……はよ」
「おはよう、敦史」
俺を見て挨拶の返事に頭を下げた千秋は昨日の異常な態度に申し訳なさを感じているのか控えめに微笑んだ
「……」
俺は何も言うことができず無言で席に着く
「千秋さん、今日は記憶を取り戻すために事故にあったところを歩いてみましょう」
悠史が何でもないようにそう言うと千秋は「わかった」と了承するかのように頷いた
朝食を終えて各自支度を進める中、俺は悠史の部屋に行った
「悠史」
「敦史?何?」
俺はノックしてから悠史の部屋のドアを開け、中に入る
「服、貸してくれ」
「!」
意外そうな顔をする悠史に「なんだよ」と少し毒づく
「ううん。どんなのがいい?」
「お前が選べ」
筋肉などで多少の差はあっても同じような体格をした俺らは前回もそうだがお互いの服を交換するくらい余裕で出来る
「これとこれと……はい、あとこれ」
ホストという職業に似合わず硬派な服装が好きな悠史が選んだ服は前回同様俺なら絶対に見向きもしない服
「さんきゅ」
「どういたしまして。……敦史」
