
言葉で聞かせて
第10章 再来
僕の目の前に座った2人は朝見た様子と特に変わったところはない
それもそうだよね
だってこの1日がこんなに長いのは僕だけなんだから
言わなきゃ
言わなきゃなんて、声も出ないくせにと自分で自分を揶揄して心の内で嗤った
『僕と、別れてください』
事前に書いていた紙を机の上に差し出す
その紙は何度も書き直したもの
別れたくなくて何度も破って
バレないように涙の跡がついてしまったのは捨てた
「は?」
「え……」
目の前で固まった2人を前にしても僕はじっと動かない
少しでも動けば涙がこぼれてしまいそうだったから
「意味、わかんねぇんだけど……」
「千秋さんこれはどういうことですか?」
当然説明を求めてくる2人
僕は震える手でペンを取り紙に書いていく
『他に好きな人が出来たんです。』
「その人は……女性、ですか?」
何を思ってかそう聞いてきた悠史さんに頷くと、「そうですか」と言ったきり黙ってしまった
悠史さん、女性なら勝ち目がないなんて考えてそう
そんなはずないのに
世界中探したってこんなに素敵な人達見つかるわけないのに
そんなこと考えていると、敦史さんが机を強く叩いて立ち上がった
