言葉で聞かせて
第10章 再来
意識のない間に荷物を漁られたんだろう
財布に入っていたはずのお金は殆ど残っていなくて「カードでもいいよ」と言ってくれた運転手さんに甘えてクレジットカードで支払った
痛む身体を引きずって家に入る
ドアが閉まると同時に目から大粒の涙が溢れ出した
「……っ、……っ」
今更どんなに泣いたってされた事実は変わらない
怖い
悔しい
悔しい
声をあげて泣いたはずが、空気は自分の喉を震わせる事はなくて
それが余計悲しかった
玄関で散々泣いて
2人に、なんて言おう
確か前に悠史さんの元彼女に脅されていた時は、自分たちの店のオーナーは大丈夫だと言っていた
だからきっとあんな何の力もなさそうな男たちぐらいなんともないのかもしれない
それにこのままにしていたら不正な売上金によって2人のお店はトップから引き摺り下ろされてしまう
だから言わなきゃいけない
でも
言いたくない
こんなのいけないことだってわかってる
僕、本当に自分のことしか考えてない
だけど
あの時撮影されていた映像を見られたくない
あの2人に失望されて、離れたくない
だって
大好きなんだもん
お金払って自分が我慢さえすれば側に入られるなら
何だってするよ
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