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言葉で聞かせて

第7章 過去


暫くするとカタン、という小さな音と共に千秋さんが机にペンを置いた


書き終わった、のかな


「終わりましたか?」


僕が聞くと千秋さんは僕を見て微かに微笑んだ
けれどその顔は今日色々なことがあったからなどとは関係ない疲れに満ちているようだった

ス、と机の上にメモ帳が差し出される

少し前まで落ち着きを取り戻していた心臓は再び早くなってきている


心臓がうるさい
喉が異様に乾く

手も、少しだけ震える


敦史が僕と一緒に読むために僕の後ろに回ってきたのを確認してから伏せられていたメモ帳を手に取った



『僕は昔、菜摘さんが悠史さんや敦史さんにしようとしたことと同じことをされたことがあります。しかもそれは今回のように未遂では終わらず、ネット上に画像がアップロードされてしまいました』


未遂で終わらなかった?
ネット上にアップされた?
どんな画像だったんだろう

千秋さんがそんな不用心なことをするはずがないと思うんだけど


その経緯や時期も、続く文章にしっかりと書いてあった


『僕が大学1年生の時です。所属した文学系のサークルでとある女性と出会いました。彼女は文化系にしては随分派手な印象の方でした』

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