
言葉で聞かせて
第7章 過去
「…………こいつ、何発までなら殴っていい?」
「やっ……ごめ、ごめんなさっ……」
敦史が拳を鳴らしながら無表情で告げると、菜摘はへたり込んだまま後ずさる
僕はようやく薄っすらと目を開けた千秋さんを抱き上げた
「……だめだよ、敦史。殴っちゃだめ」
「どうして」
「女性には優しく、だろ」
僕も菜摘の方へと歩いていく
菜摘は僕を見上げて目を潤ませた
「ごめんなさい……ごめん、なさ……っ」
心の中は何故か真っ白で
怒りとか呆れとかそんな感情は何故か浮かんで来なかった
「どうしてこんなことしたんですか?」
菜摘は恐怖なのか罪悪感なのか僕にはわからない何かで震えている
「悠史が……好き、だから……っ……どうしても私のものにしたかったの……っ」
「好きなら何でもしていいのか?俺たちは物じゃねぇんだぞ」
「……」
黙り込んでしまった菜摘に千秋さんが手を伸ばした
「どうしました?」
その千秋さんを見て敦史は「あぁ」と何か思いついたように呟いて菜摘の方に手を出した
「ケイタイ、よこせ」
「ぇ……」
「お前の携帯に何か入ってんだろ?出せよ」
あ、そうか
千秋さんへの脅迫材料が入ってるのか
