
言葉で聞かせて
第7章 過去
「そう、ですか」
僕達の間に沈黙が流れた
僕が少し目線を下に移すと、僕に気を遣ったのか千秋さんがメモ帳に何か書いて見せてきた
『お風呂沸かしました』
その気遣いに穏やかな気持ちと、こんなにやつれているのにそんなことさせてしまった自分への情けなさがこみ上げてきて
「僕なんかより、千秋さんが先に入ってください」
と、風呂を勧めた
暫く千秋さんはいい、と首を振っていたけど、僕が頑固に先に入らせようとして粘り勝ちした
千秋さんをお風呂に送り出してからソファに腰掛けて大きく息を吐く
「あ……」
と突然思い出した
そういえば昨日敦史がシャンプー使い切ったって言ってたな
替えのシャンプー高い棚に置いてあるから千秋さんじゃ届かない
僕は急いで席を立ち、浴室に向かった
僕の頭より高い位置にある棚にストックされていたシャンプーを手に取る
もう少し低いところに置いてあげないと、一人の時大変だな
なんて考えながら浴室のドアを開いた
「千秋さんすみません。シャンプー切らしーーー」
バッ、と勢いよく振り向いた千秋さんは、僕を見て怯えた顔をしている
でもそんなこと気にならないくらい、目の前の光景は衝撃的だった
白くて透明感のある綺麗な千秋さんの身体に、無数の痣と縛られたような跡がくっきりついていたから
