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春雪 ~キミと出逢った季節 ~

第6章 先輩と後輩


「加賀谷さんが飲み会参加!!
私、総務の幹事さんに伝えてきますね!」



メールチェックをすることを忘れたのか


沙月はまるでスクープを掴んだように、フロアの異なる総務課へと走り去っていった。




……沙月が言った通り


遼くんが大勢の飲み会に参加することは滅多に無い。


会話の遣り取りが聞こえたのか、周りの同僚達が若干ザワついている。


それほどに珍しいことなんだ。




「おい、ボケッとするな」

「…………!」



まとめた書類でパシッと叩かれて我に返った。


ハッ!

この短い間に残りの製本が終わってる!

いつの間に!!



「今日中に仕上げなきゃいけねぇパースが残ってるから、綾瀬と先に行ってろ」

「あ、は、はい!」

「で、お前の隣りは空けとけ」


「…………!」




ドキッと心臓が跳ねて、遼くんを見上げると




「飛ばして酔っ払うんじゃねぇぞ」


「…………っ」


「俺が行くまで、誰も座らせるなよ」




書類を左腕に抱えて


遼くんは、ふっと笑った。

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