
齧りかけの林檎
第12章 ● 君とお鍋 ♂side
ぐつぐつと、鍋の沸く音が聞こえる。
少し火を弱くすると、
食器棚の中から食器やお箸を出していた。
「いいにおいするね、おなかすいてきちゃった」
「歩くんが頑張ってくれたから、絶対においしいのが出来るよー」
おれは別に何もしてないのに、
そんなことを言うから
少し照れてしまった。
しばらくすると、土鍋の上に
鍋敷きを乗せて持ってきた彼女が
「鍋敷きそこに置いてー」
なんて言うから、
はじめてここに来たのに
何度も遊びにきたような錯覚になってしまった。
