
齧りかけの林檎
第6章 ● 君の名前 ♂side
どうしても手を離したくなかったおれは、
「今日だけ、手ぇ繋いでてもいい?
ほら、寒いし」
って、言ってみた。
この理由じゃダメだっただろうか。
他になにも思いつかず、寒さを理由に手を繋いだままでいたいと言った。
少しだけ考える素振りを見せた彼女は、
「そうだね、急に寒くなったもんね。
歩くんの手だいぶあったかくなったし。
よかった、さっき図書館の前に居た時
すっごく手が冷たかったから」
タオルを返した時に触れた一瞬で、そんなことわかってしまったのか。
