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A heart and wound

第6章 揺らぎ

さっき…多分本気で抵抗したら、逃げれた。

…だけど、俺は逃げなかった。

そのせいで、関係のないにのを、傷付けてしまっていた。

俺を、智くんを…みんなのことを思ってくれてるにのだから。

…きっと、俺以上に責任感じてる。

翔「ごめん…にの…」

和「…泣かないで、翔さん。」

え?

つつ、と頬を涙が伝った。

俺…泣いてんの?

にのが、俺の涙を指で掬うと、また抱きしめてくれた。

…俺より体も小さくて、背も小さいのに、にのに包まれてると、すごく安心できた。

和「…落ち着いた?」

しばらくして、にのがそう声をかけた。

翔「うん…ありがと、ね。」

体を離すと、少し不安そうな顔で、俺を見つめる。

和「…仕事、できる?」

翔「大丈夫だよ。…お客さんも集まってるし、穴開けることできないから。」

和「わかった…でも、できるだけサポートするから、頼ってね。」

翔「ありがと…あと、お願いがあるんだけど。」

俺がそういうと、ん?と優しい顔をして、首を傾げた。

翔「…雅紀には、言わないでほしい。」

和「そりゃ…もちろん、俺からは言わないよ?けどさ、それは言ってもいいんじゃない?

…多分、大野さんはそれも分かってて、行動したんだと思うよ?」

翔「でも…雅紀、絶対傷つくから。」

そう言って、下を向くとぽんぽんっと頭を撫でられた。

…最近、どっちが年上かわかんなくなってきたなぁ。

和「そう…わかった。翔さんがそう決めたんなら、俺は何も言わないよ。」

顔を上げると、どこか困ったような、だけど温かい笑顔で、俺を見ていた。

翔「…あ、あと申し訳ないんだけど…」

和「来んなって言われても行くからね。」

俺の言葉を遮り、そう言われた。

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