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妖魔滅伝・団右衛門!

第1章 夜討ちの退魔師団右衛門

 
「生きてりゃたまには怠けてずる休みしたくなる日もあんだろ。オレなんか織田家に仕えてた頃は、しょっちゅう無断で出掛けていたがな」

「……それで、暇を出されなかったのか?」

「出されたから、今はこうして流しの退魔師やってんのさ」

 飄々と語る団右衛門に、嘉明はしばらく言葉を失う。だが咳払いすると、改めて団右衛門に向き直った。

「それではしばらくの間、加藤家ではお前を客分として扱おう。住む家や当面の生活費は、こちらが工面する。今それらを用意させているから、準備が済み次第案内する」

「そりゃありがたい事で。もちろん、旨い酒も用意してくれるよな?」

「鬼退治に差し支えぬ程にはな。さて、私は仕事に戻る。いかな鬼でも、易々と城の中に侵入は出来ないだろう」

「侵入しても、すぐに捕まりそうだしな。まあオレとしては、気軽に外出しないようにだけは注意しておくぜ」

「心得た」

 嘉明が家臣を呼びつけると、家臣は団右衛門について来るよう指示する。団右衛門は嘉明のしゃんと伸びた背中を眺めながら部屋を出ると、案内されるままに足を運んだ。
 

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